ジークムント・フロイト(Sigmund Freud)「精神分析入門」(新潮文庫)
本書は精神分析に関わる医師だけではなく、非専門家も交えた聴衆への講義がもとになっているので専門的知識がなくても読めますが、上下巻合わせて1,000ページを超える著作なので、読む気力だけは必要です。
内容は言い間違いなどの錯誤行為や夢など、誰しも経験することの背景には欲求とそれを抑圧しようとする意識的、無意識的な力が関係していることがあるということ、神経症の患者の症状には錯誤行為や夢と似た面があること、を多くの事例を挙げながら解説し、その背景にある力の根源を解き明かそうとするものです。
言い間違いや夢は言語に依存するので、挙げられている事例(ドイツ語ベース)はそのまま日本語の世界に当てはまるわけではありませんが、ドイツ語の文章も引き合いに出して説明されているので言わんとしていることは理解できます。
また、講義内容を基にしているためか、話し言葉で生き生きと語られていると感じる反面、話が回りくどくなったり、理路整然としていなかったりして、「要するに何?」と思うことも多いです。ずっと前に出てきた夢の事例を引き合いに出されて「それどんな夢だったっけ?」となっても、索引もなく、探しにくいこともあります。
フロイトというと「こういう夢を見るとこうだ」とか「何々が好きな人はどうだ」とか判断することを想像する人がいるかもしれませんが、それはテレビのバラエティー番組や啓蒙書などが面白おかしく言っていることで、本書を読めばフロイトはそんなステレオタイプに物事を考えているわけではないことが分かるでしょう。
通読するのは結構大変ですが、読む価値はあると思います。
Ermite Parfait
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